Lipstick

第三話 
田崎邸 廊下 配電盤 弥生のナレーション

「槙は電気、セキュリティーと錠前の下調べ」
他の作業員を気遣いながら、槙子は配電盤、錠前、カメラなどをチェックし、なにかを取り付けたりしている

田崎邸庭 槙子のナレーション

「弥生は庭からの潜入ルートを確かめておいてね。ドジ踏まないでよね」
弥生は庭掃除の傍ら何やら歩数を計算したり、壁の高さ、樹木などを吟味

弥生のナレーション

「まかしといて!」 弥生は庭をウロウロしている

田崎婦人「ちょっと、ちょっと」(怒る)
弥生はビクッとするが、笑顔で振り返り会釈する

田崎婦人「アナタ何を笑ってるのかしら、もー、前にも注意したでしょ!」

弥生「・・・・・はぁ?」

田崎婦人「そこの植え込みには入らないでって、強くお願いしておいたはずよ。ワタクシの大切な○○の苗木が駄目になるざましょ」
足元の苗木を見る
苗木はもうすでに弥生の長靴に踏みつけられて悲惨な状態に

弥生「あっちゃーぁー! す、すいません」
その言葉を聞くやいなや、田崎婦人は血相を変え傍へ駆け寄り

田崎婦人「ギャーーーーー」
田崎婦人、失神

某ナイトクラブ営業前 

男性店員が開店の準備をしている。ときどき淳子たちを盗み見ている。淳子、咲季は制服、茜は薄汚れた服装でボートピープル風である
3人はひそひそと喋っている

淳子「結構それ風じゃん。いけてる、いけてる」 
しげしげと茜をみる笑顔の2人

茜  「本当? ばればれーぽい! 茜、超心配」

咲季「茜、打ち合わせどうりね。困ったら泣く、激しくだよ」
淳子は突然立ち上がる。中国人ホステス「爛々」に深々とお辞儀をする

爛々「アナタ、チュンコサンネ、アナタノオカッサンニハタイヘンセワニナッタ」

淳子「すいません。忙しいときに・・・・・」
淳子と咲季は爛々に会釈する。茜はうつむき様子をうかがい挙動不審

咲季「本当に誰に頼ればいいのかわからなくて・・・・・彼女かわいそうで・・・・・ほっておけなくて・・・・」
咲季と淳子、迫真の演技に爛々も眉をひそめる

爛々「タイタイノコトデンワデキイテル、チカラナリマショウ、テモコノコトタレニモナイショ、カタクヤクソク」
真剣な表情の爛々、深く首うなずく淳子と咲季

咲季「OK」
爛々は一枚の名刺を差し出した「亜細亜物流センター」代表 陳権玉

爛々「コノヒトタツネル、パスポート、トウリョクショスベテOK、アナタ、コレカラハタラクコトモテキル」
爛々は立ち上がり茜を抱きしめ、何やら中国語で話す。茜はドギマギ焦る 咲季は茜に信号を送る 
火が付いたみたいに泣きじゃくる茜 その時、助けるように店内の照明が暗くなる 爛々も泣いている

咲季「あっ、もう私たちお邪魔だわ。 淳子ありがとう助かったあとヨロシクネ」

咲季は立ち上がり茜を連れて出口へ向かう。茜は何度も振り向き手を合わせ「感謝、感謝」を連発、咲季も会釈する

爛々と淳子は残り、2人を見送る

爛々「チュンコサン、アマリカカワラナイホウイイ」 暗い顔の爛々

淳子「あの人、どうなっちゃうの?」

爛々「アナタシラナイイイ」

淳子「うん、わかったそうする」
爛々コンパクトを開いて化粧を直す 淳子は爛々を見ている

淳子「綺麗・・・・・」 爛々にっこり淳子に微笑む

淳子「ねぇ爛々さん。私1回でいいからホステス体験してみたいなぁー」

爛々「トウシテー!!オッカサンオコルヨ」

淳子「だって興味あるんだもん。社会勉強。 ねぇ私も爛々さんみたいに綺麗になってみたーい」

爛々「フフフフ」

淳子「ママから聞いたんだけど、ここのお店って有名人とか財界人の人とか沢山来るんでしょ? ママ羨ましがってた。 このお店は超一流だって、国会議員なんかも来るんでしょ?」

爛々「・・・・・」 自慢げに首うなずく爛々

亜細亜物流センター 外景 昼

茜は薄汚いボートピープルの姿で、おまけに聴覚障害のフリで画用紙に書いてある文字を受け付け嬢に見せる「陳 権玉に面会したい」むね、書いてある

亜細亜物流センター 事務所 ソファー

茜は中国本土に自分を頼りに待つ30人の仲間がいる事 自分も含めて密入国の斡旋を願い出た。

茜は淋しそうに、電話をしている陳を見ている。

陳  「ええ、問題ないですよ。日本に密入国したい中国人たくさんいるよ。30人ぐらい本国で待っている」

陳は茜に向かって聞く

陳  「みんなオンナばかりか?」

茜  「?」
わざと口を大きく開けて中国語で聞く

陳  「中国語」
茜は大きく首を縦に振る

陳  「全員若いオンナ、相当高く売れるよ。偽装の手配何日かかる?・・・・・」
陳はほほ笑み、茜を見ている

ひかり会議室 夜

槙子はスタンガンやロープで潜入準備に取り掛かる 弥生は潜入ルートに赤い線を引いている
咲季はぼんやり外を見ている

槙子「茜うまく入り込めたかなぁ」

咲季「・・・・・たぶんね・・・・・でも連絡遅いなぁ」    
槙子と弥生は不安げな咲季の様子をうかがっていた その時、弥生の携帯電話が鳴った

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